避妊・去勢手術をすると、どんないいことがあるの?
避妊・去勢手術のメリットは、大きく2つあります。
一つは、将来起こるかもしれない病気を予防できること。もう一つは、人と生活する上では、不要なストレスから解消されること。
どちらも、動物との幸せな生活が、少しでも長く続くように、力になってくれます。
「健康な動物の体を傷つけるのはちょっと、、」とか、「自然な状態でなくなるのは、かわいそう」、というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、それ以上の恩恵をこうむることができるこの手術について、もう一度、見直してみましょう。
もし、手術を考えてみようかなと思われた場合は、ナチュラル動物病院(072-279-1295)まで、お問い合わせください。
予防できる病気: 女の子
1. 子宮蓄膿症
その名の通り、子宮の中に膿がたまる病気です。
発情を繰り返す度に、この病気にかかる可能性が高くなっていきます。
5〜6歳頃から頻度が高くなり、お水を飲む量が増えて、おしっこの量も増えます。
病状が進むと、元気食欲がなくなり、治療が遅れると、命を落とすことも珍しくありません。
治療方法は、お薬を飲む方法と、手術で子宮・卵巣を取り出す方法がありますが、お薬だけでは、治らないことが多く、治ったとしても、再発する可能性が非常に高いので、手術をお勧めします。
特に、わんちゃんで重要な病気です。わんちゃんの避妊手術は、卵巣と一緒に子宮も取り出すので、避妊手術をすれば、この病気にかかることはありません。
2. 乳腺腫瘍
乳腺の"癌"です。
お乳にしこりができて、気付きます。
わんちゃん・ねこちゃんの乳腺は、股のところから、脇の上まで、ずら〜っと並んでおり、そのすべてに"癌"ができる可能性があります。
乳腺腫瘍は、肺や肝臓に転移することが多く、肺に転移してしまったら、呼吸困難を起こして、命を落とすことがあります。
また、乳腺のしこりも、どんどん大きくなっていき、皮膚が破れて出血することがあります。その傷は治らないため、出血は続き、そこから細菌が感染しないようにきれいにしておかないといけなく、日ごろのお世話が、大変になってきます。
治療方法は、手術による摘出しかありません(抗癌療法は、効果がないことが多いです)。
一つの乳腺にしかしこりができていなくても、他の乳腺に転移する可能性が非常に高いため、しこりだけを取るのではなく、しこりのできた側の乳腺をすべて取り出すことが必要です。
最終的には、もう片側の乳腺もすべて取り出すのが理想的ですが、一度に両側の乳腺を取り出すのは、物理的に難しい(皮膚が縫いあわせにくくなる)ので、2回以上の手術が必要になります。
わんちゃんの乳腺腫瘍は半分が、ねこちゃんは、ほとんどが悪性です。
発情を繰り返す度に、乳腺腫瘍になる可能性が高くなるため、できるだけ若いうちに避妊手術をすることをお勧めします。
残念ながら、高齢になってから避妊手術をした場合、乳腺腫瘍になる可能性は残ります。
それでも、避妊手術をしないよりは、した方が、発生する確率は減ります。
予防できる病気: 男の子
1. 前立腺の病気
膀胱の付け根の辺り、直腸(大腸の出口の辺り)の真下に、前立腺はあります。
前立腺が大きくなったり(前立腺肥大)、細菌が感染したり(前立腺炎)、前立腺が腫瘍化したりすることがあります。
前立腺が肥大すると、直腸を圧迫するため、下痢が続いたり、便をする時に、痛みを伴ったりします。
細菌が感染すると、膀胱に細菌が移行して、膀胱炎になることがあります。
前立腺癌については、100%予防できるわけではありませんが、それ以外は、去勢手術によって、予防することができます。
2. 会陰ヘルニア
肛門の横の筋肉が、薄くなることにより、直腸がヘルニアを起こします。
便をしようとして、力むと、ヘルニアを起こすので、便をするときに痛みを伴ったり、便秘になったりします。
治療方法は、手術による整復です。
男性ホルモンのバランスが、年をとってから変わることによって起こる病気のため、早めに去勢手術をすることにより、予防できます。
3. 肛門周囲腺腫
その名の通り、肛門の近くに"癌"ができます。
治療方法は、手術による摘出ですが、ほとんどが悪性です。
違う場所に転移することによって、命を落とすことが多いです。
4. 精巣腫瘍
精巣の"癌"です。
停留精巣といって、精巣が袋の中に降りて来ない子がいます。片側だけでも降りてきていれば、生殖能力はあるのですが、この体質は遺伝するため、繁殖には向きません。
体の中に残っている精巣(降りてこなかった精巣)は、将来、腫瘍化する可能性が非常に高いため、去勢手術をお勧めします。
その他のメリット
避妊・去勢手術による最大のメリットは、発情に伴うストレスから開放されることです。
わんちゃんなら、散歩に行く度に、異性を意識してしまいます。
異性のところへ駆け寄りたいけれど、飼い主さんのことも裏切れないし、、、という葛藤を常にしなければなりません。
発情出血も始まり、飼い主さんの手間も増えます。
ねこちゃんの場合、日が長くなって発情の時期になると、夜毎、求愛の歌を歌い始めます。
人間と生活するうえで、これらのストレスは、不要なものです。
避妊・去勢手術によって、人との絆がより深いものになると、信じています。
なお、避妊・去勢手術によって、性格がおとなしくなったり、問題行動が軽減したりすることもあります。
しかし、この問題については、個体差がありますので、過剰な期待はしないほうがよいかと思います。
避妊・去勢手術のデメリット
太りやすくなる
様々なストレスから開放される代わりに、太りやすくなります。
しかし、これはご飯の量を調整するだけで解消されます。
食欲旺盛になる子が多いので、飼い主さんが我慢してご飯の量を
制限できるかどうかが、ポイントになります。
麻酔のリスク
避妊手術も去勢手術も、全身麻酔をかけて行います。
どうしても、麻酔のリスクは付きまとってしまいます。
しかし、これは麻酔前の身体検査や血液検査をしっかりすることと、麻酔中の管理(心電図・呼吸数・血圧など)をしっかり行うことで、回避することができます。